港区・値下げ21戸を分解する — 7月中旬の定点観測
7月5日から18日、港区の売出在庫で価格改定25戸を確認した。値下げ21・値上げ4。下げ幅の中央値は2.7%(500万円)で、6月の3〜7%から明確に縮小。この数字を「買う人」「売る人」それぞれの実務にどう使うかまで落とし込む。
今週の数字
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 売出観測(坪単価判明・投資用除く) | 延べ367件(前週327件) |
| 価格改定を確認した住戸 | 25戸 |
| 内訳 | 値下げ21戸 / 値上げ4戸 |
| 値下げ幅 | 0.2〜13.2%(中央値 2.7%=約500万円) |
| 最大の値下げ | ▲5,000万円(3.8億円→3.3億円) |
2週間で25戸の価格が動いた。件数では値下げが圧倒的だが、注目すべきは幅のほうだ。6月下旬の観測では値下げの中心帯が3〜7%だったのに対し、今回は中央値2.7%。「まとめて下げる」から「反響を見ながら500万円単位で刻む」へ、売主側の動き方が変わっている。
価格帯別に何が起きたか
1.5億円未満(改定5戸)は、下げ幅が1.1〜2.7%に収まる。100万〜300万円単位の小刻みな調整で、投げ売りの気配はない。この帯は実需の買い手が厚く、価格を大きく崩す前に反響が入る。
1.5〜3億円(改定9戸)は0.9〜10.4%と幅が開く。中心は2〜5%だが、売出から時間の経った湾岸系タワーの高層住戸で10%超(約2,000万円)の修正が1件出た。この帯は駅距離・階数・眺望の条件差が、そのまま値持ちの差になっている。
3億円超(改定7戸)は、意外にも0.2〜2.8%の微調整が中心だった。最大13.2%(▲5,000万円)の大幅修正も1件あるが、これは長期在庫の水準訂正で、高額帯全体が崩れている構図ではない。6月に見られた3億超の一斉調整は、一巡した可能性がある。
値上げの4戸は、うち3戸が新築の期分け・売出住戸の入れ替えに伴うもので、幅は4〜13%。相場が上がったのではなく売主の販売戦略なので、中古の値動きと混ぜて読まないこと。
買いを検討している方へ — 数字の使い方
いま港区で交渉の通り相場になっているのは2〜3%だ。指値を入れるなら、まずこの幅が現実的なライン。売出から2ヶ月以上経過し、すでに改定歴のある住戸なら3〜5%も十分に届く範囲に入る。
もうひとつ実務的なのは、値下げ直後の動きだ。値下げは売主が「この期間内に売りたい」という意思を数字で見せた瞬間で、内見と交渉を入れるタイミングとして最も合理的。検討中の物件があるなら、担当者に「売出開始日と改定履歴」を必ず出してもらうこと。この2つが、指値の根拠になる。
逆に、新築の期分け値上げを「今買わないと上がる」という材料にされたら、一度立ち止まってよい。上で見たとおり、それは中古相場の上昇とは別の現象だ。
売却を考えている方へ
いまの港区は値下げ21対値上げ4。強気の初値がそのまま通る局面ではない。観測していて目立つのは、強気の初値から2〜3%刻みの改定を繰り返すパターンで、これは買い手側から「待てばまだ下がる」と読まれ、かえって追いかける展開になりやすい。
選択肢は2つ。成約想定の+5%以内で初値を置いて早期の反響を取りにいくか、強気に出すなら改定は刻まず1回で決め切るか。中途半端な小刻みが一番不利になりやすい、というのが直近2ヶ月の観測から言えることだ。
参考:港区・坪単価目安の上位(独自調査)
当方の販売事例集計に基づく坪単価の目安。取引価格そのものではなく、水準感の参考値として。
| 物件 | 坪単価目安 | 竣工 |
|---|---|---|
| 麻布台ヒルズレジデンスB | 3,442万円 | 2025年 |
| パークコート赤坂檜町ザ・タワー | 3,337万円 | 2018年 |
| 虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワー | 3,093万円 | 2022年 |
| グランスイート麻布台ヒルトップタワー | 2,894万円 | 2014年 |
| 六本木ヒルズレジデンスB棟 | 2,752万円 | 2003年 |
| アークヒルズ仙石山レジデンス | 2,499万円 | 2012年 |
| 三田ガーデンヒルズパークマンション | 2,416万円 | 2025年 |
| パークコート麻布十番ザタワー | 2,176万円 | 2010年 |
竣工20年超の六本木ヒルズが2,700万円台を維持している一方、築浅でも立地・グレードで2,000万円を切る物件は珍しくない。港区の中でも「築年より運営とブランド」が価格を決めることが、この表からも読み取れる。
観測の裏側 — この数字をどこまで信じるか
今回の売出観測は延べ367件、直近週の坪単価中央値は1,121万円/坪。ただし週ごとに観測対象の入れ替わりがあるため、週次中央値の上下を相場の騰落として読むことはしない(先週の1,582万円との差は、市場変動ではなく観測構成の違いによるもの)。相場の方向は、今回の25戸のような「同一住戸の実際の値動き」の積み重ねで判断する。数字の限界を明示するのも、このノートの方針だ。
次号
値下げした21戸がその後どうなるか——掲載終了(成約の可能性)まで追跡し、「値下げは効いているのか」を検証する。
出典: レインズ在庫情報(2026年7月5日〜18日取得・港区)および独自調査(販売事例集計)をもとに作成。改定事例は集計・傾向ベースで記載し、レインズ由来の個別物件情報は掲載していません。