同じ棟でも坪単価が1.6倍違う — 港区を「住戸単位」で買う技術
港区の売出しを毎日見ていると、同じマンションの中で坪単価が1.6倍も開くことがある。棟の名前で相場を語る時代は終わりつつある。この記事では、住戸ごとの差をどう読み、いくらまで指せるかまで具体的に整理する。
この記事で分かること
港区で「あのマンションはいくら」と一つの数字で考えると、なぜ損をするのか。そして、同じ棟の複数住戸から「買うべき一戸」を見分け、いくらまで値引きを言えるのか。読み終えたときに、担当者に投げる具体的な質問と、指値の目安の数字が手元に残るように書いた。
今週の数字
7月16日から19日の観測で、同一住戸の価格改定を11件確認した。値下げが8、値上げが3。値下げ幅の中央値は約4.7%(金額でおよそ2,000万円)、最大は10%を超えた。
ただ、今週いちばん実務に効くのは改定件数ではない。同じマンションの中で、住戸ごとに価格の物差しがこれだけ違う、という事実のほうだ。
同じ棟の中に、1.6倍の開きがある
同じマンションに複数の住戸が同時に売りに出ているケースを集計した。棟内の坪単価(当方の独自集計によるレンジ)を見ると、開きの大きさに驚く。
| マンション | 棟内の坪単価レンジ(独自集計) | 開き |
|---|---|---|
| プラウドタワー芝浦 | 約868〜1,406万円/坪 | 1.62倍 |
| リビオタワー品川 | 約790〜1,268万円/坪 | 1.61倍 |
| コスモポリス品川 | 約776〜963万円/坪 | 1.24倍 |
同じ建物、同じ管理、同じ共用施設。それでも住戸によって坪単価が1.6倍違う。この棟の「平均坪単価」を一つ計算しても、実際に売られている住戸のほとんどは、その平均には当てはまらない。
なぜ、これだけ開くのか
開きを生むのは、ほぼ次の4つだ。
階数と眺望が最も大きい。高層・角・抜けた眺望の住戸は、代わりがきかないので強気を通せる。低層や隣接建物で視界がふさがる住戸は、同じ棟でも坪単価が2〜3割下がる。次に向き。南・南東と、北・北西では、同じ面積でも坪単価で1割前後変わることが多い。三つ目が専有面積。広い住戸ほど総額が大きくなり、総額の壁で坪単価はやや下がる傾向がある。最後が売主の事情。住み替え期限がある売主は現実的な価格を、急がない売主は強気を置く。
つまり「棟の相場」という平均値は、この4つのばらつきを一つに潰した数字にすぎない。買うときに見るべきは棟ではなく、その住戸がレンジのどこにいるかだ。
買う人の実務 — どの一戸を、いくらで
まず、検討中のマンションで一番高い売出しを「その棟の相場」だと思わないこと。それは、たいてい一番眺望が良く代わりのない住戸で、あなたが検討している別の住戸に同じ値がつくわけではない。
同じ棟に条件の近い住戸が複数あるなら、坪単価が低いほうが交渉の起点になりやすい。特に、売出しから2ヶ月以上たっていて、すでに一度値下げしている住戸は狙い目だ。今週の値下げ8件も、下げ幅が大きかったのは長く売れ残っていた住戸に集まっていた。
指値の目安は、直近2ヶ月の港区の改定を見るかぎり、通り相場で2〜3%。売出しから時間がたち、改定歴のある住戸なら3〜5%も現実的なラインに入る。もちろん住戸の希少性しだいで通らないこともあるが、根拠のない指値ではなく、この幅を起点に置くと交渉がぶれない。
担当者にこの3つを必ず聞くと、判断が一気に固まる。売出開始日はいつか。これまでの価格改定の履歴はどうか。同じ棟の似た条件の住戸は、いま坪単価でいくらか。この3点が、あなたの指値の根拠になる。
売る人の実務 — 棟の最高値に引きずられない
同じ棟に強気で売れている住戸があると、それを見て自分も強気で出したくなる。だが、その住戸が売れているのは価格ではなく、眺望や向きといった住戸そのものの希少性かもしれない。自分の住戸が「代わりのある条件」なら、棟内の最高値ではなく、条件の近い成約・売出しを基準に置いたほうが、結局は早く高く決まる。
直近の港区で目立つのは、強気の初値から2〜3%ずつ何度も刻む売り方だ。これは買い手から「待てばまだ下がる」と読まれ、かえって追いかける展開になりやすい。選ぶなら、成約想定の+5%以内で出して早く反響を取りにいくか、強気で出すなら刻まず一度で決め切るか。中途半端な小刻みが一番不利になる。
数字の扱いについて
棟内の坪単価レンジは当方の独自集計で、個別の売出価格そのものは載せていない。また週ごとに観測対象が入れ替わるため、週次の平均や中央値の上下は相場の騰落としては読まない。相場の方向は、同一住戸の実際の改定を積み上げて判断している。
この先の一歩
気になるマンションがあるなら、その棟に今いくつ売りが出ていて、坪単価がどこからどこまで開いているか、当方で個別にお調べできます。棟の平均ではなく、あなたが狙う住戸がレンジのどこにいるかを一緒に見ましょう。特定のマンションの動きを継続して追いたい場合は、AIウォッチリストに登録しておくと、その棟の新規売出しや価格改定を監視してお知らせします。
(次号では、これまで追ってきた「値下げした住戸が実際に動いたか」を、掲載終了の動きとあわせて検証する。)
出典: レインズ在庫情報(2026年7月16日〜19日取得・港区)および独自調査(販売事例集計)をもとに作成。棟内の坪単価は独自集計のレンジで示し、レインズ由来の個別住戸情報・生の売出価格は掲載していません。